NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会設立趣旨書

人として生まれたら、人として生きる権利があります。人はそれぞれが望む生き方を実現するために働きます。人には職業選択の自由・権利があり、また労働の義務と納税の義務もあります。だからこそ、働く意志のある人すべてに、働ける場を提供することが、国家だけでなく社会の務めです。一方、生き方が人それぞれならば、仕事の適性や働ける条件も人それぞれであり、様々な人々に、様々な働き方を提供する必要があります。しかし障がい者については、一般企業には限られた人達しか受け入れられていません。障がい者の労働機会はまだ限られています。それ故一般企業や特例子会社だけではできなかった障がい者の「労働の可能性」を、どのように、どれほど広げられるか、福祉施策と労働施策にまたがった就労継続支援A型事業所(以下「A型事業所」と記す)に社会的な存在意義を見出すことができます。A型事業所では、一般企業よりも、より多様な働き方を実現できる可能性があるのです。

また、職業能力は環境が作り出すものと考えますので、「能力適性」にあった仕事を用意するだけでなく、「能力を育て作り出す」ことも、A型事業所に課せられた使命と言えるでしょう。すなわち、A型事業所こそは、障がい者の「労働の可能性」を広げる制度です。それだけに、一般企業以上の経営努力も求められます。しかしA型事業所には、社会的活動に経験の深い福祉施設やNPO法人だけでなく、ビジネス経験に富んだ一般企業も加わりましたので、障がい当事者がいきいきと働くよろこびを享受できるよう、この三者の英知を集め、相互に情報を共有し、刺激し合い、融合を図ることができます。

一方全国的にはA型事業所がこの数年で著しく増加していますが、一部の事業者は、利用者の処遇に問題があり、儲け主義が見られるなどと、メディア等に報道されました。また事業者間では利用者当事者の不利益、人権無視への憤りの声が上がり、一部A型事業所の在り方への危惧の声が寄せられている現状があります。そこでA型事業所の健全な発展や一部業者の状況に危機感を持った有志が、全国組織のNPO法人の立上げを計画し、各都道府県単位で活動する組織・個人に呼びかけました。平成26年9月30日に事務局を設置、事前準備に入りました。そして平成26年11月22日に一部代表者が集合し、設立に向けた具体的協議を行い、平成27年2月28日には設立総会を開く運びとなりました。今後は、障がい者の所得保障とその支援、事業者間の情報共有と連携ネットワーク化、自主的な研究事業、広報等の活動、国・地方自体への要望等の活動をとおして、A型事業所の質の向上と障がい者のエンパワメントを図っていきたいと考えています。

「障がい者も生きやすい世の中は、みんなが生きやすい世の中です」。障がい者に限らず労働現場から疎外されている社会的弱者と呼ばれる方々に寄与するため、思いをともにする全国のA型事業所や幅広い立場の方々の参画を促進することや、障がい者の労働のあり方の研究や活動の成果を公表することをとおして、障がい者、社会的弱者、ひいては誰もが働きやすい社会の実現を目指したく、NPO法人の設立を図ることとしました。

平成27年2月28日

全Aネットの基本方針

全Aネットの設立理念に基づき、我々A型事業者は障がい福祉サービス事業所として、下記を基本方針として活動します。

  1. 私たちは、利用者に対し、一人の人間として接し、その自己決定を尊重し、就労と地域生活を支援します。
  2. 私たちは、利用者に働き甲斐のある仕事・達成感のある仕事を提供し、地域で生活をしていけるように最低賃金を保障します。
  3. 私たちは、利用者に労働者としての権利を保障し、利用者の作業能力を育て、能力を伸ばす作業環境を提供し、障がいのない人と同等に活躍できる職場を提供します。
  4. 私たちは、利用者に対し安全衛生環境の確保はもとより、物理的にも精神的にも働きやすい環境を提供します。
  5. 私たちは、情報の提供に努め、希望に沿って一般就労へ移行を支援します。
  6. 私たちは、アセスメントを入念に実施し、利用に関しては利用者の希望を最大限尊重します。
  7. 私たちは、これらの活動を確実なものとするために、常に提供するサービスの自己評価をし、公表し、事業の継続・発展に努めます。

平成28年3月22日
NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会